1 ハルシネイション - 4/4

 白く細い指がはしばみ色の繊細な髪を編んでいく。先を三センチほど残してリボンでまとめると、冷たい手の中で花飾りがちりちりと鳴った。
 終わったと軽く肩を叩かれた少女はぱっと振り向いた。確かめるように首を左右に動かして、やがて三つ編みの出来栄えに満足したのか、花が咲くように笑った。
(あのひとたち ちがった?)
 少女の手がそう動く。青い瞳に不安の色がよぎったのを、情報屋は見逃さなかった。
「そうか。俺が伝えていた雰囲気に似ていたから、あの二人を連れてきたのか」
 少女はこくりと頷いた。
(ごめんなさい)
「いや、頼んでいたのは俺の方だ。ありがとう」
 礼を言われた少女は恥ずかしそうに微笑んだ。言葉よりも表情の方が饒舌で色彩豊かだった。
(わたしの おとうさん みつかった?)
 躊躇いがちに少女は手を動かす。
「まだだ」
 これまで何度となく繰り返してきたやりとりだった。少女は悲しげに肩を落として、三つ編みの先の花にそっと手を伸ばした。
(また あえる?)
 立てた両の人差し指を寄り添わせる仕草。あいたい、と小さな唇が声もなく動く。
「いつか、な」
 少女は指切りをするように両手の小指を絡ませる。
「約束はできない。でも、いつか、だ」
 少女は小さく頷いた。
(あなたも 大切なひと あえると いいね)
 情報屋は何も言わず、夜の帳を下ろすようにただ目を閉じた。