残響、蜃気楼
生きていくしかないのなら、せめてそこまで届くように歌おうか。
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いつかの春に触れる
春はいつもそこで鳴っていた。さやさやと、さらさらと、遠き日の眼差しを閉じ込めて。
文章 薄暮短編original
終 薄暮教室
春は何度でも巡り来る。それが救いになるのだと、教えてくれたのは先生だった。
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十三 ひとひら
いつの日か、君のいるところに手を伸ばす日がきたら。そのときにはまた、話の続きをしよう。
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十二 薄暮の部屋
拐ってやりたい。その運命からも、枷のついた身体からも。――望まないと知っていた。
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十一 追憶の桑楡
どこにも行かないでくれと乞い願う。どうかずっとこのままでと望む。残された時間は恐らく僅かなのだろう。
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九 風花の思い
失いたくない、そんな思いが日増しに募っていく。終わる予感を見なければ、こんな思いには駆られまい。
文章 薄暮original
八 緋寒桜
眩いものすべてから身を遠ざけた。誰もいなくなった暗がりを愛そうとして、結局できなかった。
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七 冬蝶の夢
手の届かないものを数えて暮らすことに慣れてしまった。慣れたと、思い込みたかった。
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六 繊手に初紅葉
どうかいつまでもこのままでと願うのは、彼にとって酷なことだろうか。
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五 空蝉・夏の果て
雨の降り止んだ日に、ようやく本当の彼に出会えた気がした。
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