序 はじまりの春
あの春のことを、僕達はいまだに鮮明に思い出せる。
一 四月六日
まず、言葉を交わそう。その向こうに心が見えたら、きっともう大丈夫だと思えそうだ。
二 五月拾八日
やりたいことが特にない人間のものの決め方。紹介、偶然、時に運命。
三 七月二拾九日
蛍見ながら吸うた煙草を、俺は一生忘れへんのやろうな。
四 八月二拾五日
友と見上げる夏の終わり、宵花火。こういうものを青春と呼ぶのだろうか。
五 拾月三日
夜更けにふと目が覚めた。呼ばれた気がして筆を執った。……みんな、ありがとう。おれ、幸せだ。
六 二月拾七日
いつか、みんなに手紙を書く日がきたら、きっと今日のことを思い出すよ。
七 四月七日
せっかく上手くいきかけていたのに、容易く崩れていく。
八 六月六日
これだから、お人好しは嫌いだ。
九 拾月拾四日
いつの日にか彼に置いていかれたとして、自分はそれを黙って見送るのだろう。
十 拾二月拾六日
見果てぬ夢に、どうか小さな希望の灯りを。
十一 二月九日
あんな光景、もう二度と見たくないと思った。
十二 三月拾二日
今宵の星が、きっといつまでも僕達を守ってくれるだろう。
終 三月三拾日
さようなら。またいつか人生の楓の頃に、どこかで。